In まち暮らし不動産

まち暮らしってなんだろう??をご紹介するまち暮らしレポートはじまります。

紹介するのは齋藤弘典さん、取材・文は吉野佳さんです。
ありがとうございます!

では、じっくりご覧ください。レイアウトした原稿もありますので、あわせてご覧頂けるとうれしいです。

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ひょんなことから始まるまちとの暮らし
―トリさんとよばれるオトコ 齋藤弘典さんの話し―

取材・文 吉野佳

【きままな1人と1羽暮らし】 

 トリさんこと齋藤弘典さんは、西国分寺の静かな住宅街のアパートに住んでいます。林に囲まれた場所で、何より飼っている小鳥と一緒に暮らせるところが気に入っています。
 国分寺で生活するようになって13年。はじめは、このまちへの思い入れは全くと言っていいほど、なかったそうです。5年前まではただ寝に帰るだけのまち。ところが、今ではこの地域で働き友達もたくさんいて、ホームグラウンドのようになっています。彼の暮しがどんな風に変わっていったのか、なんだか知りたくなりました。

 そのはじまりは5年前。きっかけは、インコのぺピンと暮らすようになり、小鳥のある魅力に気づいたこと。
「鳥ってこんなにも意思疎通ができる生き物なんだ」と、おどろいたそうです。知らない人には人見知りをしてしらんぷり。嬉しければあちこち飛びまわって、肩にちょこっと乗って話しかけてくる。「純粋なところが、すごーくいい。感情がオープンで嘘がない。だから、やりとりが生まれやすいし、生きているものから感じる面白さがあるんだよね。」

 ちょうどその頃、図書館で『バードハウス』という本にたまたま出逢ったトリさん。
「巣箱なら知ってるけどな・・。」
そこには、外国のおうちや灯台の形をしたカラフルな木箱の写真が。”木々に鳥の家を取り付けて、野鳥を自宅の庭に招こう”そんな夢のある内容に惹かれて、早速自分でもつくってみることにしました。

【「これ、オマエにやるよ」】

 休みの日になると、お気に入りの武蔵台緑道公園へ。テーブルで丸太を切り抜いているそばを、散歩する人が行き交います。
「こいつ何やってんだ・・」という、冷めた視線を感じながらも、思い切って「こんにちは!」と声をかけると、「こんにちは」と一応返ってくる。そのうち向こうから話しかけてくる人や顔見知りもできてきて、毎週行くのが楽しみになってきます。

 遠巻きに見ていた全く知らない人たちが、次々と向かいに座って各々違う話をしていく。「楽しい話だけじゃなくて、『老い先みじけえ。足が痛い、腰が痛い』とかさ、愚痴も言ってくるの。そう言いながらも歩いてるのはいいことだな、と感心するしね。」
仲良くなってくると、自分の知っていることを教えてくれたり、お菓子を持ってきてくれたりする人もいる。あるおじいちゃんは、「こんな小っちゃいノミじゃだめだ。ちょっと待ってな。」わざわざ家に戻って「これで昔B29の模型を作ってたんだよ。オマエにやるよ。」と大事な道具をトリさんにくれました。

【バードハウスで広がるまちと人との楽しい関係】

同じ頃、*おたカフェに通うようになり、スタッフの方にいつものように声をかけてみました。すると、たまたま彼女も鳥が好きということが分かり、バードハウスの話で意気投合。どうやらその本の著者がこの辺りに住んでいるらしい。自然や地域の活動に興味がある常連さんたちも巻き込んで話が盛り上がり、みんなで会いに行くことに。そのことがきっかけで、トリさんは*バードハウスの活動「空の家」をその仲間と始めます。国分寺のまちのあちこちにバードハウスを取り付けて、鳥が飛んできて巣をつくり小さな暮らしを営むのをそっと見守るのです。ちょっと声をかけてみたら、おたカフェも酒屋さんも木に取り付けてくれました。うどん屋のおじさんだって白い灯台のおしゃれなのを付けました。おたカフェの前では子供たちがトンカチの音を元気よく響かせて、イロトリドリのかわいいおうちをつくります。バードハウスは少しずつまちに広がって、いつしか齋藤さんは周りから“トリさん”と呼ばれるようになっていました。「あそこは水玉のバードハウスがある家。あっちは赤いのがある家。表札代わりにみんなが付けて、バードハウスが街中に広がったら、楽しくない?」と今日も夢をえがきます。春、鳴き声とともに鳥がやってくるのを楽しみに待ちながら・・

【「ひょっとして、齋藤さんですか」】

 そういえば、今の部屋に引っ越してきたときには、こんなこともあったみたいです。国分寺の地域通貨「ぶんじ」の裏に引越しのごあいさつを書いて、同じアパートの人のポストへ。名前と”近所のカフェ、クルミドコーヒーで使えます”のメモを添えて。その後、クルミドコーヒーで見知らぬ青年に声をかけられます。ある冊子に載ったトリさんの記事と写真を見て、上の階のヒトだと分かったのだとか。「贈ったメッセージがきっかけで、本当に人に出逢えるなんて!」初めてのことにかなり嬉しそう。そういうことがトリさんの日々の暮らしをめぐっています。
 ちょっとしたきっかけを少しだけ大事にしたら、同じまちにいる知らなかった人とも出会って、その面白さに気づく。触れあうことのなかった世代の人との会話も始まる。そこから、たまたま新しいことがはじまることも。まちも人も何も変わっていなくて、きっと関わり方が変わっただけなんですよね。そうなると世界が広がったような感じがして、日々の暮らしももっと面白くなりそうです。

【「たまたま」や「ひょんなことから」を少しだけ大事につなぐ】
  
 トリさんのまち暮らしの話には、ストーリーを感じます。「たまたま」と「ひょんなことから」がとても多く登場します。「すごーくいい!」と「おもしろいね」も口癖です。そこからは、何かを目指そう、つかみにいこう、という気負いはあまり伝わってこないのです。でも本当は偶然の人や場所との出合いを受け流さないで、面白いと感じる方へ一歩踏みだすから、物事が”楽しい方”へ動いていくんでしょうね。流れてきたらひょいっと、キャッチしているみたいです。そういう1対1から始まる、まちとの関わり方は自然体でいいなと感じます。もし、まちづくりやまちの課題を考えるなんて時でも、できるだけそういう視方でまちと関わっていきたい。そんなことを思ったのでした。

バードハウス「空の家」(国分寺バードハウス振興会)・・自宅の庭の木々に鳥の家を設置し翼を持つ友人を迎え入れ、鳥たちの営みを身近に親しむためのもの。鳥の家、つまり森を失い離れていった鳥たちをまちに再び呼ぼうという活動。市内のお店や家にバードハウスを設置し、バードハウスづくりのワークショップも行っている。

*おたカフェ・・史跡の駅おたカフェ。国分寺・お鷹の道近くの総合案内施設。休憩や懇談の場として、史跡地域の魅力を発信する場。

*地域通貨「ぶんじ」・・国分寺で循環する地域通貨。「ありがとう」「お誕生日おめでとう」など裏にメッセージを書いて相手に渡せる。クルミドコーヒー、おたカフェなど市内のお店などで通貨(1枚100円)として使用可能。

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