【朝日新聞に「まち食」の記事】

<2014年7月3日朝日新聞朝刊>
本年4月に「まち食サミット」にて、おたがいさま食堂とご一緒頂いた
地域リビング プラスワン 、 おかんめし。 、 共奏キッチンと並び、おたがいさま食堂を紹介いただいています。
こうした取組みを、「まち食」として、一同に紹介されること自体が、価値のあることだと思っています。また、「まち食」という語自体が全国的に始めて使われたことになります。


「家」や「世帯」を単位とした「共食」ではなく、
「まち」のなかで、ゆるやかに食を通じた
関係性が広がっていくこと ーー「まち食」。
参加してみようかなと思って頂いたり、
自分のまちでもやってみようと思って頂くきっかけとなり、
仲間が増えていくことを望みます。


記事では、首都大の饗庭先生からコメントも寄せて頂いており、
とても勇気づけられました。

ーーーー
みんなで料理、一緒に食べる
口コミ・ネットで、地域で――「まち食」

口コミやSNSを通じて集まった人たちが、一緒にご飯を作って食べるイベントが各地で開かれている。世代間交流や団地の活性化など目的は様々だが、誰もが楽しめるご飯作りが人々を引きつけている。

■民家に2歳から76歳の40人 世代超えつながる場

6月の週末、東京都世田谷区の古い住宅街。夕方になると、一軒の民家から野菜を煮込む甘い香りが漂い始めた。

台所では、15人ほどの男女がまな板やコンロに向かい、にぎやかな声が通りに漏れる。見知らぬ者同士が一緒に夕飯をつくって食べるイベント「共奏キッチン」だ。

「すみません、初めて来たんですけど……」。台所に入ってきた女性に、一人がすかさず「ニンジンの葉っぱを洗ってくれますか? かき揚げにするから」と声をかける。「え、葉っぱって食べられるんですか?」。自然に会話が生まれた。3時間後、2歳から76歳までの40人が、できあがったサラダやパスタなど15種類の料理を囲んで乾杯。立食パーティーを楽しんだ。

共奏キッチンは2011年2月、IT関連会社を営む高田彰一さん(40)が始めた。取引先の別荘に招かれ、見ず知らずの客たちと一緒にパン作りをした体験がきっかけだ。「人と関わらなくても、端末やネットで何でもできてしまう。便利な世の中になったが、失ったものも大きい。だからこそ、人との関係づくりの場を設けたいと思った」

月1回、空き家を活用した交流スペースを借りて開くイベントには、フェイスブックや口コミを通じて30人前後が集う。世田谷区で農業を営む常連の吉岡誠市さん(62)は「職業、年齢に関係なく色々な世代と出会える。こういうつながりが、いつか自分を助けてくれると思うんだよ」

参加者が一緒に料理して食べるイベントは、昨春からJR阿佐ケ谷駅前でも開かれている。月1回、ビルの貸しスペースに地域の人たちが集まる「おたがいさま食堂」。近くに住む斉藤志野歩(しのぶ)さん(35)が始めた。仕事の後、保育園に長男を迎えに行き、夕飯を作って2人きりで食事をする毎日。その繰り返しに閉塞(へいそく)感を抱いていた。「家のことは家の中で完結させるんだという常識にしばられず、地域の人とにぎやかにご飯を作って食べたら、気持ちが楽になるかも」と思いついた。

商店街の魚屋からブリを丸ごと1匹仕入れ、みんなで解体したこともある。「楽しい、おいしい場所には人が集まる」と実感し、食を通じてつながりをつくる活動を「まち食」と名付けた。「まち食を通じて、ゆるやかに人をつなぎたい」と話す。

■学生と「おかん」がお袋の味 月1ランチ、悩み相談

大学生の声から生まれたまち食もある。東京都国立市公民館で月1回開かれる「おかんめし。」は、12年冬にスタートした。地域のまちづくり勉強会に参加した一人暮らしの一橋大生が「お母さんの手作り料理が食べたい」と口にしたのがきっかけで、居合わせた母親世代が一念発起して始めた。

地域の母親と学生たちが公民館に集まり、一緒にランチを作って食べている。参加費500円。一橋大4年の松本知仁さん(23)は、昨夏からほぼ毎回参加している。「一人暮らしだと余らせてしまうので、なかなか野菜を買えないけれど、この日は栄養たっぷりのご飯が食べられる」と満足げだ。

息子の受験を控えた母親から「どんな態度で接したらいいか……」と相談を受けたことも。「母もこんな風に悩んでいたのかなと、同世代との交流だけでは気づけない発見もあった」

代表のみやけようこさん(43)は「就職して国立市を離れても、たまに顔を出してくれる卒業生もいる。この地域を忘れずにいてくれるのはありがたい」と話す。

65歳以上が45%に上る板橋区の高島平団地では、希望する住民が当番制でご飯を作る「おうちごはん」が昨春から続く。主催するのは、団地内でコミュニティーカフェを開くNPO法人ドリームタウン。月に20日前後開かれる「ごはん」の参加者は、子育て世代から高齢者まで幅広い

「たくちゃん」の愛称で親しまれ、週1回は手料理を披露する内田卓さん(77)は、団地に一人暮らし。「今度はいつ作るの、と聞かれるとついつい続けてしまう。定年後は雀荘(じゃんそう)にこもっていたけど、今はおうちごはんで毎日忙しいくらいだ」と、当番の日を楽しみにしている。

(伊藤舞虹)

■まちづくりの一計

<まちづくりに詳しい首都大学東京・饗庭伸准教授の話
おいしいこと、楽しいことには人が集まる。誰もが興味を抱きやすい料理が、まちづくりの仕掛けとして使われている点がうまい。

「高齢者を助けましょう」と呼びかけても、関心のある人や困っている当事者しか来ないケースが多い。一方、楽しいことには自然に人が集まり、親しくなってその先に助け合いが生まれる。コミュニティーを生み出す新たな取り組みだ。
ーーーーー

お問合せ

お問合せはこちらからどうぞ。ご記入いただいたメールアドレスにご返信いたします。

Not readable? Change text. captcha txt